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小説や徒然やALSや。
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もうずっとサイトの小説を更新していなかったのですが、と言っても小説やプロットは作ったりしていたのですが、サイトにあげてなくて。

という訳で、気が向いたので『白』とゆー短編小説をあげてみようかと思います。しかしページ作るのが面倒なので、こっちのブログに。

ジャンルは青春恋愛現代ものみたいな……? 野球部のお話です。

もし気が向かれた方は宜しければ読んでみてくださいー。

何回かに分けてアップしようかとも思ったのですが、かえって読みにくいかも? とも思い、とりあえずまとめてあげますー。もし読みづらいようでしたらまた考えてみたいと思います。

あ、主人公の名前が白でヒロインの名前が椿ですが、どうぞ気にしないで下さい。ははは。白、はすぐ決まったのだけれど、ヒロインの名前が……一字で花の名前で白い花…ていうと椿が一番最初に浮かんできて……。

岩瀬、ていうのも、はは、解りやすい名前だわ。


それでは以下、白ですー。





近頃、やけに『白』という色が気になるのは、俺の名前が白だからという訳でも無いのだろうけれど。

 もう落ちない汚れが無数についたボールを、けれど几帳面に拭いながらそんな事を思う。練習で使われたたくさんのボールを練習の後、全て清めるのはずっと毎日の日課だった。日課というより、義務といったほうが正しいのかもしれない。そこに「俺達」と付け加えれば更に正確さは増す。
 俺達、とはつまりレギュラーでも無くベンチ入りも果たせなかった者たちだ。学年は関係ない。一年でもレギュラーのヤツはいるから。
 そんな無駄な事を考えつつ作業を終える。手を動かしていても、頭が暇だと要らん事を考える。いくない。考えても仕方が無い、というよりむしろ、考えないほうが良い事なのかもしれないのに。
 ボールへついた落ちない汚れ。元々はその白も縫われた赤も、鮮やかだったのに。
「白ー終わったか?」
 おう、と答えながらそちらへ目をやると、俺と同じ様に三年でベンチ入りすら出来なかった織田が、ベース周りの掃除を終えたところだった。毎日毎日、汚れるボールをベースを全てを、それでも俺達は毎日綺麗にする。それは義務だから。俺たちのチームにおける役割だから。
 毎日毎日。繰り返し繰り返し。そこに意味があるのか知らない。たまに叫びだしそうになる。けれど、叫ぶ代わりに笑う。叫んで、痛いヤツ扱いされても困るし、そんなもの自分へ塩を塗りたくる行為だ。
 こんな気持ちが始まったのは、三年になってもベンチ入りすら出来ない事が解ってからで、そしてそれが自分の責任だと解っているからだ。誰のせいでもなく、ただ自分だけの、唯一の、明白に鮮やかに。それは俺を責め立てる。
 
 
 昇降口の脇にあるひっそりとしたスペースに、ここ以外では見た事も無い古ぼけた自販機があって、そこでは紙パックのジュースが売られているのだけれど、そこで牛乳を買って飲むのがこの高校に入ってから二年半、俺の習慣となっていた。ここの売り上げの一部は市内の福祉施設に寄付される仕組みになっているらしい。そこへ俺は子供の頃、学校の取り組みで一度ボランティアに出かけた事がある。
 だからという訳でも無いけれど(だから、なんて言うのは恥ずかしすぎる、イイ人か)、そして、もうこの歳になればいくらカルシウム摂取に努めたところで背が伸びるノゾミも少ないのだけれど、ていうか野球をもう辞めるかもしれない今、そもそももう背が伸びたって仕方も無いのだけれど、それでも俺はこの習慣を改められない。習慣とはそういうものだ、問答無用のある種、暴力的な。
 自販の横にある、やはり古ぼけたベンチにどさりと座って、ストローを噛みながらちゅるちゅると啜っていると、一階の渡り廊下を渡る椿の姿が見えた。椿は小さいのに、遠くからでもすぐ解る。続いて、俺と同じ部の岩瀬の姿も見えた。岩瀬が椿に声をかけたのか、二人は立ち止まって何か話している。俺は、少し不思議な気がした。二人が知り合いだとは知らなかった。何を話しているのだろう。
 それから少し時間が経って、椿は渡り廊下から昇降口をすり抜け、俺の元へとやってきた。ベンチに座る俺を見つけると、整った顔でにんまりと笑う。
「白、みっけー」
「なに?」
 実は、俺はここで牛乳を飲んでいる姿を見られるのが恥ずかしい(理由はギゼンだとかカルシウムとかからで)。だからなるべくひっそりと行うようにしているのに、椿はそんなものいつだって越える。やすやすと。
「野球部からプリント来てたから、持ってきてあげたよん」
 ピラ、と一枚の紙を俺に手渡してから、椿が隣に腰掛ける。俺は素早く牛乳を飲み終えて、空きパックをゴミ箱へ放り投げてから、その紙にざっと目をやる。
「なんのお知らせ?」
 そう問う椿は、プリントへは目を通していないらしい。俺が見てから、と思っているんだろう。椿のなかには図々しさとそういった折り目正さが同居している。
「練習試合」
「もう引退したのに?」
 椿は黒目がちの目をくるり、と動かした。
「ん。毎年、秋口にやんの。夏の試合に出られなかった三年生の、引退試合」
 毎年、毎年、それは県内強豪校であるうちの高校の恒例で、やはり県内有数の強豪校と試合を行う事になっている。
「わーじゃー白、出るんだー観に行こうっと」
「………」
 確かに俺はその試合に出るのだけれど、それはイコールで俺がレギュラーでは無かったと言っているようなもので。
「白の試合、久しぶりー超楽しみ」
「………」
 確かに俺が試合に出るのは、自分だっていつぶりだろうかと暫し考えてしまうほど久しぶりなのだけれど、しかしなんだって椿のなかには図々しさと折り目正さが、矛盾無く同居しているのだろう。
 好きだけど。
 高一の時、椿に告られて付き合い始めてから、もう二年ほど経っている。
 俺はふと思い立って、両の掌で椿の顔をむぎゅっと包む。俺の手はそれなりに大きくて、椿の顔はひどく小さくて、そうやってしまうと覆るほどだ。
「白?」
 不思議そうに椿は俺の名を呼んだ。手の甲に椿の長い髪がはらはらと舞って、その感触がくすぐったいような気がした。
 強豪校である野球部のメンバーは俺達の高校で大層もてるけれど、だから仲間はカノジョ持ちが多くてその彼女も可愛い子が多くて、けれどそのなかでも椿はかなり可愛い部類に入るのに(これは身内の欲目では無く。多分。恐らく)、よりによって俺と付き合うなんて、椿も貧乏くじを引いたものだ。プロ野球のスカウトが目をつけてるヤツも、強豪の大学入りを確実にしているメンバーだって、うちにはいるのに。
「行かないほうがいい?」
 俺にされるがままになっている椿は、ふわりと訊いた。
「……ううん、来ていいよ。てか、来て」
 最後に掌に力を込めて、椿のピンとした頬をぐしゃ、と壊してから、俺は椿から手を離し立ち上がる。続けて椿も立ち上がり、俺の腕をとる。もう昼休みも終わりだ。時間はいつだってすぐに過ぎてしまう。
「やたー楽しみー」
「このプリントって岩瀬が持ってきたの?」
「え、ううん。一年の子が持ってきてくれたよ?」
「……ふーん、そっか」
「どして?」
「いや。まーいーや」
 そう? と不思議そうに首を傾げる椿を促して、俺達は教室へと戻る。秋の正午を過ぎた光が、なんだか妙に白っぽい。
 
 
 甲子園で優勝した事もある、そしてプロ野球選手も何人か出しているうちの高校は、全国から部員が集まる。それもリトルリーグや中学では、エースで鳴らしたやつばかりが。
だから、そのなかで上に行けるレギュラーを取れるやつは、当然才能もあって努力したやつだ。そのどちらが欠けてもいける訳も無い。
 ───俺に無かったのはどっちなんだろうな。まったく努力していない、とは言わないけれど胸を張って努力したとは言えるはずもなくて。
 バッティング練習をしながらそれにきちんと集中しながら、けれど頭の片隅で、そんな事をぼんやりと考える。俺へ球を投げてくれるのは岩瀬だ。毎年、秋の練習試合が決まると俺達控えが練習のメインになって、今までレギュラーを張っていた彼らがサポートへ回ってくれる。それも練習試合同様、毎年の習慣だった。
 どうして秋の練習試合など出来たのだろう。試合相手はいつも甲子園の出場をかけて、県内で争っている高校だ。強豪校では殆ど三年間、試合に出られないまま辞めていく部員が多いからせめてもの花道として、二校間でいつのまにか出来た行事だとは聞いた事があるけれど。
 なんだか俺には、寂しさをわざわざ重ねる行為にしか思えない。
 まるでこの球を毎日清める行為みたいだ。綺麗にしてもすぐに汚れる。つまり、無意味。
 それでも三年間、俺達が球を拭って磨いた事に意味がきっとある(と思いたい)ように、その試合にもなにがしらの意味はある(と思いたい)のだろうか。
 岩瀬が球を投げてくる。──来た。俺は狙い定めてバットを振りぬく。白球がグラウンドを張っていく。
「ナイスバッティング!」
 俺の次に控えていた織田に声をかけられる。
「すげーじゃん。気合入ってんねー試合決まったから?」
 彼は罪無く笑う。織田は努力型の典型で、俺のように中学からの推薦でこの部活に入ったのでは無く、一般受験で入り三年まで部活を続けた数少ない部員の一人だ。背が低く(つまりそれは手足も短いという事だ)体型に恵まれなかったけれど、その体は鍛え抜かれている。
 俺が織田くらい努力していれば。もしくは織田が俺ぐらいでも体格や才能があれば。
 どんなだったんだろうな。なんでだったんだろうな。
 なんで俺達は選ばれなかったんだろうな。
「……おーう」
 けれどそんな事は問わないで言わないで、俺は織田へへらへらと笑ってからバッターボックスを出る。
 叫びたい叫ばない。叫ぶ代わりに泣く代わりに、バッターボックスに入った織田と彼へ球を投げる岩瀬を眺めた。
 束の間、見惚れた。
 なんて美しい投球フォーム。岩瀬はプロに入るだろう。彼は選ばれた。誰に?何かに、確かに。
 才能を持って絶え間なく努力を続けられる人間。限りなく進む人。俺達とは違う。岩瀬は何を思って、今、球を投げているんだろう。俺にはそんな事想像もつかなくて、俺は岩瀬を見ていると尊敬と賞賛と羨望と嫉妬が同じだけ、する。それはきっと俺の生涯続くんだろう。この先、彼を見るのは薄い液晶画面のなかか、同窓会ぐらいだろうけれど。
 それともいつかこんな気持ちも、笑える日がくるんだろうか。その日が早く来て欲しい気も、永遠に来て欲しくない気もした。
ぱっとグラウンドのライトがついた。暮れるのが遅い秋の日が、ようやく落ちようとしているのだ。
 日が短くなっていく、少しずつ少しずつ。
 
 
 と、なると恋しいのは肉まんだ。コンビニの前に座り込んで俺達は買ったばかりの、ほかほかと湯気を立てる肉まんにかぶりつく。練習後の買い食いは悩みがあろうがあるまいがいつだって比類なき至福だ。ほの甘いふんわかとした生地のなかの、肉汁たっぷりの餡。
「はーうめー。俺、この為に練習してるのかも」
 織田が言う。案外、彼は何にも考えていないのかもしれない。考えすぎているのは俺だけなのかも。いつか、コーチに言われた事がある。考えすぎるのがお前の悪い癖だ。考える前にバットを振れと。それがどうしても出来なくて、今の俺がここにいる。
「……俺、意外とキャッチャーとかのが向いてたのかも。ファーストでは無く」
 ふがふがと肉まんを咀嚼しながら、そんな思い付きを言ったら織田は「はあ?何を今更」と笑った。
「じゃあ大学行ったら、やってみれば?今からでも遅くないだろ」
 笑わずにそう答えたのは岩瀬だった。彼は俺らとは違い、あんまんを食べている。女子か。
 普段、レギュラーでエースである岩瀬と俺達がこうして、部活後の行動を共にする事は少ない。それは差別や派閥では無く、ただ単にレギュラーと控えではスケジュールが違うからなのだけれど、今日はこうしてなんとなく流れで共に帰る事になってしまった。
「大学かー。けど、俺大学行っても野球するか解んねーし」
 やめて、何がしたいという事も無いのだけれど。子供の頃から野球しかしていなかった俺は、他のものを知らない。世界で、野球と椿だけしか知らない。
「やめるの? 勿体無い」
 岩瀬はまるで空気みたいにそう言った。何の悪意も無く。俺は嬉しいような、けれど途方も無く腹が立つような気がして、肉まんを食べ終えるとその手で岩瀬の首をぎゅぅと締めた。
「なにっ?」
 突然の俺の奇行に、岩瀬は小さい目でしぱしぱと瞬きする。
「うるせーよ」
 首ぐらいで済ませた事を感謝してもらいたい。
 持ってるやつには解らないんだろう。持たざるものの気持ちだとか。そして、持ってるやつには解るんだろう。才能の有りようだとか、この先の進む道だとかが。俺には、まるで解らないものたちが。
 
 
 岩瀬に褒められたからという訳でも無いけれど、そして試合が近づいているからという訳でも無いけれど、もう免除された朝練に気が向いてそれでも来てしまった俺は、解りやすいなと自分でも思う。現役の時は朝練なんて大嫌いで、たまにサボる事すらあったのに。
 朝と秋で、空気は少しぴりりとしていて、それがむしろ心地よい。早起きも朝練も大嫌いだけれど、慣らしたてのグラウンドをスパイクで踏むのは大好きだった。子供の頃から。サクサクとした感触がこちらもやはり心地よくて楽しくて。
 引退すれば俺はこれを失う。一つを失うのは、連鎖的にその付属のものを失くす事なのだと知る。まるでドミノ倒しみたいに。
 グラウンドには一、二年生が集まっていて、その中には織田やそして岩瀬の姿もある。織田は解るけれど、岩瀬もまだ朝練に出ているのだなと、俺は少し不思議な気がした。プロ入りがほぼ確実だと言われている岩瀬だから受験勉強の必要は無いし、調整の意味があるのかもしれないけれど、それにしてももう引退したのだから朝練ぐらい休めばいいのに。俺は試合があっても、今日まで朝練なんて出てこなかったのに。
 人間、そうやって少しずつ差がついていくのだろう。一秒、一滴、ほんの少しずつ、けれど着実に。雨で石が削れるみたいに。
 幼い頃リトルリーグの監督が言っていた事をふいに思い出す、一日練習を休めば自分に解って二日休めば周りに解って三日休めば観客に解るものだと。昔からよく言われる事は、それだけたくさんの人の実感と本当がこめられているんだろう。
「………」
 久しぶりの朝練だから、そして朝の空気も冷えてきたからストレッチを念入りにする。肩の筋肉をびりりと伸ばす。痛くて心地よい。痛いと快感が似ているのは思えば不思議だ。
 俺はずっと痛いものから逃げてきたけれど、その分きっと快感からも遠ざかっていたんだろう。
 岩瀬やそして織田も、その快感を多分知ってる。
 
 
「……あれ……?」
 練習が終わりに近づいた頃、もうすっかり光と空気から朝が消え始めた頃、それは徐々に登校の生徒達がグラウンドの向こうに見られるようになった頃、俺はグラウンド脇に思いがけない人を見つけた。
 腰まである長い、ふわふわとした明るい髪、小さくて華奢な体躯、そこについた花のような顔。椿だ。
 不思議なもので、俺はどこにいても椿を易々と見つけられる。それだけ椿の容姿が目立つせいもあるけれど、理由はそれだけでもないだろう。
 それなのに、椿は俺に気付かない。グラウンドを見ているのに。勿論今まで俺が朝練に出ていなかったから、いると思ってもいないというせいもあるけれど、理由はそれだけでもないだろう。それだけ俺がここで目立たないという事だ。
 不思議なものだと思う。たった一人に見つけられないだけで、まるで世界や自分を失くしたぐらいに思えるものなんて。人間、絶望なんてそこらに転がっているんだな。
 椿は、俺の代わりに違う人間を見つける。選ばれたその人間は、すぐに椿の視線に気付いて近寄る。
 それは岩瀬だった。二人は言葉を交わしている。ここから、その会話を聞く事は出来ない。聞こえないその言葉たちを、とても聞きたいようなけれど、とても聞きたくないような気がした。遠い。それは実際の距離以上に。
 俺はけれど、二人に歩み寄る。すると俺に最初に気付いたのは、椿だった。それだけで少し救われたような気持ちになる。
「めちゃ驚いたー白、朝練来てたの?」
 言って椿はやはりにんまりと笑った。そこには何もネガティブな感情は見えない。椿はいつもの椿だ。清々しく堂々とした。
「ま、たまには。試合もあるし、試合で椿にヤバいとこ見せらんないしさー」
 そう答えて俺は椿に近寄り、頭をぐしゃぐしゃと撫でる。ただ純粋に触りたかっただけでは無く、どこか薄汚い感情で。
 そうやって椿が自分の所有物である事を、見せ付けたかった。バカだ。
「仲良いねえ」
 岩瀬はいつもの声で言う。
「………」
 何を話していたんだとかいつの間に仲が良くなったんだとか、訊こうとは思わなかった。思えなかった。二人が俺を裏切らないのは知っていたから。それは信頼だとか言うものよりもっと強い確信で、二人はただただそういう人間なのだ。汚い気持ちを持たない。知らない。
「まーねー」
 だから俺はそれだけ答えた。感情のまま言葉を作らなくなったのはいつからだろう。
「てか、俺着替えてくるから椿待っててー」
「りょーかい」
 椿がこめかみの横に手をあてて了解のポーズを取るのを見てから、俺は部室に向かって走り出す。走りながら目の端には二人の姿が映る。二人はまた言葉を交わしている。二人は俺を裏切らない。それを知ってる。もし岩瀬が椿を欲しいと思うなら、彼は彼特有の潔さでそれに対応する事だろう。けれど、二人がよく似合っている事もまた俺は知っていた。
 
 
 白い煙が部屋の向こうにゆうらりと消えていくのを、椿はじっと見つめている。
「要る?」
 俺は人差し指と中指の間に挟んでいた吸いかけの煙草を、椿の顔の前まで持っていく。
「要らなーい。興味ないから」
 そうすんなりした声で言ってから、けれどなおも椿は煙の行方を見つめる。椿の瞳は黒目が大きいけれど、その脇にある白目はものすごく綺麗な白をしている。怖いほど。
「ただね、煙が揺れてるのを見るのが好きなだけ。またもし興味がわいたら貰うよー」
 俺を咎める事も無く、椿は素直に言う。いつからかたまに吸い始めた煙草がレギュラーを取れなかった原因では勿論あるはずもないけれど、それにベンチ入りしているヤツで吸っているヤツだっているけれど、織田は吸わない。岩瀬もそうなんだろう。なんとなく。
 付き合って数年経つのに、椿の部屋へこうしてやってくるのは今まで数えるほどだった。俺は野球で忙しかったし、たまの休みには二人で出かけている事が多かった。これからはこの部屋に来る事が増えるのかもしれない。椿との付き合いがこれからも続くならばだけれど。現実はいつだって少しずつ変わっていくものだから。
 椿の部屋はシンプルで、装飾品や女子が好みそうな雑貨はまるで無い。大きなベッドとパソコンが置かれた机、本棚、備え付けのクローゼット。それだけ。この居心地の良い部屋を、もう訪れる事が無くなったら俺は思い出すんだろう。 
「……椿は俺が、レギュラー取れなくて夏の試合出れなかった事、ヤじゃないの?」
 ベッドに共に座る椿に、そんな事を訊いた。それを訊くのは初めてだった。同じ部活の仲間には、三年でベンチ入り出来ない事が解った途端、カノジョに振られたヤツがいる(ちなみに織田だ)。女ってのはいつだってそんな風に鮮やかだ。椿がそういう性質の女では無い事は勿論知っているけれど、それでも少しはイヤでは無いのかと。
 訊いてみたかった。
「なんで?」
 椿は俺の隣で、ひどく不思議そうな顔をした。
「そりゃ、ベンチ入り出来て白が嬉しいなら私も嬉しいけど、でもダメだったけど、それってただそれだけの事でしょ」
「それだけの?」
 なんだか少し可笑しい気がした。
 俺がぐだぐだ悩んでいるものを、椿は「それだけの事」と言う。人によって価値って違うんだな。
「そう」
 気遣いをしているのかいないのか、するりと椿はそう応えて、俺はそんな椿を好きだと思う途方も無く。
「じゃあ俺がプロ野球選手になれなくて、いー大学にも入れないでも?」
「それだけの事だよ」
 椿は笑う。いつもと変わりなく。
「ぷーになっても?」
「まあ白はそうしないと思うけど、でもそしたら私が養ってあげるよ」
 椿は相変わらず笑いながら、そんな冗談とも本気だとも解らない事を言った。俺にはそれが、救いと同時に失望だった。椿は俺を甘やかす。
「……あんまり甘やかさないでよ」
 隣にいた椿の体にぎゅっと抱きついてからそう言った。情けない事に泣きそうだったので。男の意地としてこんなことで泣いてる姿は見せられん。
 椿の体は華奢なのに柔らかくて、俺はまた椿ともし別れたらこれを思い出すのだろうなと思った。この柔らかさだとか匂いだとかを。
「難しいね」
 ふふ、と椿は柔らかい声を出す。そう、椿は潔くてそして優しい。俺がそういった、椿や岩瀬や織田みたいな人種に惹かれるのは自分が持っていないからなんだろう。椿は俺を甘やかすから、俺は自分を甘やかしてはいけない。……難しいけれど。今まで甘やかし倒してきたから。
「──俺、そろそろ帰るわー」
「そう? じゃあ玄関まで送るね」
 椿は俺を引き止めない。立ち上がった俺の腕をふんわりと掴む。その掌が大丈夫だよと言っている気がした。
 
 
 二階にある椿の部屋から降りてきて玄関までやってきた時、その扉が内側へ開いた。
「あ、お帰り」
 椿は俺へいつも向ける声と寸分も変わらない声で(椿は多分、世界の誰に対してもその声を向ける)そう声をかける。
「白くん帰るの? お夕飯でも食べてけば?」
 椿のお母さんには、今まで数回会った事がある。椿のお母さんはひどく椿に似ている。その声も顔も気性も。けれど今、その隣にいる少女に出会ったのは初めてだった。
「白、初めてだよね。妹の綾。大事なの」
 椿は俺の手を離すと、妹の横に回るとその細い肩を抱いた。だいじ、と言う言葉をその言葉に相応しい重みを込めて言った。
「こんばんは」
 俺は少し緊張しながら、妹さんに挨拶する。妹さんは、顔かたちはあまり椿に似ていないけれど、大きな黒目と強い白目の美しいコントラストはそのまま椿のものだった。
 
 
 椿が俺の家まで送ると言うので、いいよ女子じゃないんだから反対じゃんと答えたら、彼女はでもそうしたいからと答えてにんまりと笑う。
「綾はね、生まれつき障がいがあるの」
「───ああ、うん」
「だから市内の施設に通ってて、今、お母さんが迎えに行って帰ってきたとこ」
 歩きながら、すんなりとした声音で椿は言った。俺は今までそれを知らないでいた。椿の性格で隠すという事をする訳が無いから、それはただ単に今まで言う機会が無かっただけなのだろう。あるいは、どうでもいい事だと思っているのかもしれない。取るに足らない、ただそれだけの事だと。
 暮れかけた空、秋の風は少し冷たくなっていて繋いだ掌の体温を余計に温かく感じる。ずっと繋いでいるとどこからかが自分の熱で、どこからかが椿の熱か見失う。
「市内の施設って」
「そう、いつも白が自販で牛乳飲んで、募金してるとこ」
 やはり椿はにんまりと笑った。俺はひどく照れくさい気がした。募金というのも牛乳というのも。
「いや、そういうんじゃなくて習慣なの。しゅーかん」
「そう? ふふ」
 本当にただの習慣なのか、無意識的になんらかの想いがあったのかは、自分でもよく解らない。けれど毎日習慣で飲み続けた牛乳が、知らない間に、俺を途方も無く甘やかす椿の大事な妹の下へ行っていたなんて、不思議だ。
 それはすごい救いのような気がした。
 たとえもう背が伸びる事は無くても。こんな俺でも。無駄じゃなかったと、そう思えるから。
 知らないとこに救いは容易く転がっているんだ。なんだかまた泣きそうになって、けれど俺は必死で堪える。そんな姿は見せられない。というかなんだかめっきり涙腺が弱くなっているような気がするのは気のせいか。
「そう言えば私。大学」
 ぽつと吐き出すように、唐突に、椿は言う。
「うん?」
「看護系のとこ行こうと思ってるんだー」
「……それは妹さんの事で?」
「ううん、じゃなくて。でもそれもあるのかなあ。けど自分の適性とか考えてね、ほら私人の体のケアするの好きだし」
「椿はいい看護師さんになるだろなー」
 とてもとても。
「ふふ、ありがと」
 群青色になった世界のなかで、椿は笑う。
「ああ、そうだ、岩瀬くんはね」
 椿がその単語を出すだけでどきりとする俺は臆病。
「施設にたまにボランティアに来てくれるの。野球がお休みの時だけ、たまに。子供たちと野球してくれたり遊んでくれたり」
「えっそうなん。椿、何で今まで言わなかったの」
「んー言っていいのか、よく解らなかったから」
 その気持ちはよく解るなと思った。だから俺も、あの自販で牛乳を買う姿を見られる事が恥ずかしいと思っていたのだし。
「じゃあ、なんで今言うのー?」
「ふふ、白が心配するからね」
 遊ぶように歌うように、椿は言う。
「……俺もしようかな、ボランティア」
 ふと、そんな気持ちになった。ギゼンか、イイ人か、なんてつっこみは驚くほど自分のなかに無く。そんなところだけでも岩瀬を見習おうと思ったのかもしれないし、もしくは岩瀬に対抗したいと思ったのかもしれない、そんなところだけでも。
「そう? すてきだね」
 楽しげに、けれどどうでも良い事のような軽さで、椿は言った。夕暮れの世界のなかで、椿の言葉が響いて消えていく。この風景だったり言葉だったり匂いだったりを、俺はいつか思い出すのかもしれない。
 
 
 朝練をして昼練をして放課後の部活は勿論懸命にやって飽き足らず自主練までして、そうしたら明日の土曜が練習試合という今日には、体の筋肉がぱんぱんだった。今までどれだけ努力していなかったか、体の声で心が響く、思い知る。これだけの事を今までどうして出来なかったかと思うけれど、今まで出来なかったからこそ今出来ているのだろう。と考えるなら、ダメダメだった日もムダじゃない。問題はこれを継続出来るかなのだけれど。努力ってそれが難しい。瞬間なら意外に容易い。
 だらしなく腰で履いた制服のズボンから、いつものように百円玉を取り出してコイン口に入れてから自販のボタンを押す。がごんと音がして、古いパッケージの牛乳が出てくる。ストローを差込み、喉を潤す。うまい。ギゼンとか背だとかよりもしかしたら、純粋に俺は牛乳が好きなだけなのかもしれない。と、思ったら、ちょっと笑えた。現実って単純だったり難解だったりする。
「───あれ、岩瀬」
 そうして牛乳を飲んでいたら、昇降口からひょっこりと、高い位置の頭が見えた。俺だって平均的高校生より遥かにガタイはいいけれど、岩瀬は俺よりさらに頭一つ分高い。
「お、どうも」
 俺がここにいた事を知っていたのかいないのか、岩瀬はそんな妙な挨拶をした。俺はやはり少しおかしくなる。少しおかしくなって、だから訊いてみる事にした。
 ずっと訊きたかった、でも訊けなかった事を。
「つか、岩瀬って、お前さー」
 岩瀬が迷った末、苺ミルクのボタンを押すのを見ながら(女子か)俺はそう声をかける。
「インポなの?」
 コントみたいに、岩瀬は飲みたての苺ミルクをぶーっと盛大に吐き出した。
「はいっ? なんでそーなる」
「んじゃー椿が好きなの?」
 訊ねたら、岩瀬はゆっくりとこちらを振り返った。
「じゃなかったら、たまの部活の休みの日にボランティアなんかしねーじゃん。お前、すげーもてるのに」
 悔しいが、俺以上だ。学校一だ。当たり前だけれど。
「ああ、うん」
 岩瀬は微かに笑ったような気がした。
「──そーだね、うん。椿ちゃんが、俺は好きだけど」
「うん」
「でも施設に行って、ボランティアするのはそれが、いやそれだけが理由じゃないよ」
「そーなん?」
「なんていうか……」
 言葉を選びながら、岩瀬はゆっくりと息をしてそして吐き出す。
「たまに俺、頭が真っ白になるんだよね」
「……なんで」
 岩瀬みたいな男でもその立ち居地でも、そんな事はあるんだと思った。意外だった。俺ならばしょっちゅうだけれど。
「なんかさ、こうやって強い学校でピッチャーやって、勿論負けたくないから練習するんだけど、いざバッターと向き合ってる時は『殺す殺す』ぐらいな勢いで投げる訳だけど、そうやって今、俺がこの立場にいるって事は……なんか、たくさんの屍の山に立ってるみたいな気が、たまに」
 俺は思った。岩瀬は一番勝負に向いていて、だからこそ勝負に向いていないのだと。
「たまに、して。たくさんの人を負かして、それなのに結局まあ惜しかったけれど甲子園には行けなくて。いつも夢とかに出てくるんだよね。負けた人のその時の目とか、最後に負けた時の自分の顔とか。そーゆーの考えてると、ふいにたまに頭が空白に真っ白に」
 そう言った岩瀬の指は、小刻みに震えていた気がした。マウンドでは誰にも負けない、強いその指が。
「でもあそこ行くとそれが改善される気がするから。ポジティブな方向で。うん、誰かの役に立ってる感じが心地いいのかな。ただ、それだけ。椿ちゃんは可愛くて好きだけど、でも椿ちゃんは白が好きだからね」
「───でもそれでも、お前、プロに行くんだろ?」
「うーんどうかな。考え中」
「はあっ?」
「負けるのがイヤとか真っ白になるのがイヤだとか、そーゆーんじゃなくて違う人生もあるかなーとか。医者もいいなあと思うし」
 確かに岩瀬はあれだけ野球に打ち込んでいるのに、成績だっていつも上位だ。しかししかしけれどけれども。俺は岩瀬を殴りたい気がした。持っているものは持っていないものの気持ちが解らないらしい。どれだけ切望して熱望して、どれだけどれだけ叫ぶくらい焼けるくらい血を出すくらい泣きたいぐらい、それが欲しいのか。それらを簡単に放り出せるなんて。
 俺が岩瀬を睨みつけると、岩瀬はきょとんとした顔をしていた。本当に殴ってやろうか。俺はぷるぷると震える拳を胸の前まで持ってくる。ここでエースを殴れば明日の試合に出られないのは確実だけれど、知ったものか。こいつには制裁が必要だ。俺には発散が必要だ。
 ───けれど岩瀬に俺の気持ちが解らないように、俺には岩瀬の気持ちが解らないんだろう。そこで見えるものだとかその歓喜だとか苦悩だとか。その白さだとかが。
 俺には岩瀬の気持ちは解らない。けれど、その白さを俺も多分知っている。
 岩瀬にも俺にも織田にも椿にも、一人ひとりそれがある。
 俺はぐーにしていた掌をゆっくりと、広げる。そうしてズボンからもう一枚硬貨を取り出し自販機に投入する。
「……まあ、なんにせよ頑張れ。これは餞別だ、飲め」
 そして俺は買った牛乳をずい、と岩瀬に突き出した。笑いながら岩瀬は牛乳を受け取った。
「餞別って、それなら明日はお前が試合なんだから俺が渡すべきなんじゃないの」
「いーから」
「それに俺、牛乳より苺ミルクのほうが……」
「いーから! 黙れ!」
 本当に殴ってやろうか。けれどそんな事をすれば、自分の拳だって痛いし、岩瀬に万が一ケガでもさせたら堪らないし、明日の試合に出られなければ、椿だって寂しがるだろうし。何より、自分が、一番嫌だし。
 だから俺はもう一度堪えて、岩瀬に牛乳を押し付けた。
 
 
 翌日に試合を迎えた今日の練習は比較的軽めのものだったけれど、俺は最後まで残り張ってきた体を入念にストレッチして、グラウンドやボールの片付けを手伝った。いつものようにグラウンドの端にしゃがみ込み、ボックスに入ったたくさんのボールを白いタオルで磨いていく。ボールを磨くのも、これで最後かもしれないなと思う。このグラウンドの匂いも熱もこのボールの感触も。
 相変わらず容易にボールの汚れは落ちない。消えない傷もたくさんある。それでもこのボールたちがなければ練習も試合も出来ない。磨く事に意味が無い訳じゃない、きっと。それでもここに、自分たちのいる意味があるように。
 俺と同じように、織田も最後まで残っていてグラウンドの整備をしていた。ボール拭きを終えてから俺は、織田に声をかける。
「俺達ってケナゲだよなー」
 そんな風に笑った。明日が引退試合という今、不思議と叫びたいとは思わない。明日の今頃、俺はどんな気持ちを抱いているのだろう。号泣しているかもしれないし、こんな風に笑っているかもしれない。
「引退試合間際までな」
 織田もまた、真っ黒に日焼けした顔をけらけらと笑わせる。
「うわっ引退って口に出すと寂しーな」
 そう素直に言葉が出て知る、俺は自分が思っているより野球が好きなんだと遥かに。
 ───それもそうなのかもしれない。小さな頃からずっと四番でレギュラーで天狗で、けれどこの高校に入ってその鼻は見事にぱっきりと折れて、それでどんなに惨めでも惨めでも惨めでも、辞められなかった理由なんて、気付いてみれば明快だ。当たり前の事にようやく気付く瞬間。
「でも引退って言葉さ、まー確かに寂しいんだけど、でもそこになんか明るいもんとか清々しいもんも一緒にあんじゃん?」
「───そっかー」
「そーだよ、だって卒業式の次は入学式だし、カノジョと別れたら次の女が出来るじゃん」
「懲りないなーお前」
 前の女(結構可愛かった、性格はともあれ)には木っ端微塵に振られたはずなのに。けれどそれがいかにも織田らしいと思い、俺は声に出して笑った。軽口を叩いて笑い合い帰りにはコンビニでも寄って、それは俺達がずっと過ごしてきた日々だった。まるで永遠みたいに、ずっと。
それも、今日で終わる。
 
 
 確かにここ最近、試合には出ていなかったけれどそれでも小さな頃から試合なんて飽きるほどこなしてきたのに、俺はケータイのアラームが鳴る一時間も前に目覚めてしまった。やばい、緊張している。もう眠れはしないだろうから、とりあえずベッドの上で上半身を起こしてすーはーと深呼吸する。緊張している、けれど愛おしい気もしたそれすらも。
 部屋のなかでストレッチしたりしてなんとか時間を過ごしてからリビングに行くと、母親が朝ごはんの準備をしていた。味噌汁の匂い。
「あれ、今日は一人で起きたんだ? ご飯?」
 リビングの向こう、キッチンから俺を見つけて母親は少し驚いた顔をした。
「ん」
 思えば俺が曲がりなりにも野球をやってこれたのは、母親のおかげでもあるのだ。最後(かもしれない)日に改めて思うのも間抜けな話だけれど。
「かーさん、今日試合来んの?」
「行っていいの?」
 母親は更に驚いた顔をする。それもそのはずで、俺は母親が試合に来るのをいつも嫌がっていた(理由。試合に出られる可能性も少ないし、もし出られたところでミスした姿を見られるのが嫌だから。思えば下らない理由だ。ていうか最初から出られないとかミスすると決めかかっているところがまさしくヘタレだ)。
「ん。椿も来るからさー」
「へーありがと」
 母親は上機嫌に言った。お礼なんて言う立場は逆なのに、けれどこうして誰かを喜ばせる事なんて思ったより簡単なんだ。
 
 
 少し早目に家を出る。と、玄関のところに俺はちんまりと置かれたものを発見した。それは紙パックの牛乳だった。学校のあの自販機の。膝を広げてしゃがみ込んで、俺はそれを手に取ってみる。
「ふふ」
 思わず声に出して笑ってしまう。まだ冷たい、牛乳の紙パック。その頼りない重み。見慣れたパッケージ。その向こうににんまりと笑う椿の顔が見える気がした。いかにも椿らしい。手作りのお弁当とか可愛い縫いぐるみとか甘い手紙じゃなくて、シンプルに、牛乳。
「ははは」
 笑いながら、俺は牛乳を持っていない方の手を顔にあてる。掌で顔をぐしゃぐしゃにする。束の間泣いた。右手で、ボールの代わりに牛乳を握りながら。
 頑張ろう。
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